📋 スタッフからひとこと — 山田敬一(葬儀映像演出 25年)

BGM選びは、本当に難しいのです。何百回と葬儀の映像演出を担当してきた私でも、毎回悩みます。同じ曲でも、選ぶ写真との組み合わせ次第で、受ける印象がまるで変わる。それほどBGMは大切な要素です。著作権の問題とあわせて、この記事で丁寧に解説しますね。
故人様との最期のお別れの場である葬儀では、思い出の曲をBGMとして流したいと考える方は少なくありません。特に、普段から聴き慣れているiTunesやAmazon Musicで購入・ダウンロードした楽曲を使いたいと思うのは自然なことです。
しかし、個人的に楽しむための音楽と、葬儀という公の場で使用する音楽には、著作権や著作隣接権といった法的な違いがあることをご存じでしょうか。この記事では、iTunesやAmazon Musicの楽曲を葬儀のBGMとして利用する際の著作権・原盤権の問題について、プロのWebライターがわかりやすく解説します。安心して故人様をお見送りできるよう、適切な音楽利用の方法を学んでいきましょう。
葬儀BGMにiTunes/Amazon Musicは使える?結論と注意点
基本的に「個人的利用」に限定される
iTunesやAmazon Musicなどの音楽配信サービスを通じて購入・ダウンロードした楽曲は、基本的に「個人的な利用」を前提としています。これは、ご自宅でご自身が聴いたり、家族やごく親しい友人と楽しむ範囲での利用を指します。
多くの配信サービスの利用規約には、「私的利用の範囲を超えて、公衆に聞かせたり、配信したりすることは禁止」といった主旨の条項が明記されています。個人的な利用であれば問題ありませんが、不特定多数の人が集まる場での利用は、この「私的利用」の範囲を超える可能性があります。
葬儀での使用は「公衆上映」に該当する場合も
葬儀は、故人様を偲ぶ大切な場であり、ご遺族やご親族、友人・知人など、様々な方が参列されます。この「様々な方」という点が、著作権法上の「公衆」に該当する可能性を生み出します。
特に、故人様の思い出のスライドショーやメモリアルムービーのBGMとして楽曲を使用し、それを参列者の皆様に見ていただく行為は、著作権法で定められた「公衆上映」に該当する場合があります。この「公衆上映」を行う際には、原則として著作権者や著作隣接権者の許諾が必要となります。
音楽利用に関わる2つの重要な権利:著作権と著作隣接権
音楽を利用する際に理解しておくべき権利は、大きく分けて「著作権」と「著作隣接権」の2つです。これらがどのように異なるのかを見ていきましょう。
著作権とは?(作詞・作曲家に与えられる権利)
著作権とは、楽曲の「創作物」そのものに対して与えられる権利です。具体的には、その楽曲を作った人、つまり作詞家や作曲家が持つ権利を指します。
著作権には、楽曲を複製する権利(複製権)、公衆に演奏する権利(演奏権)、公衆に向けて配信する権利(公衆送信権)、そして映画やスライドショーなどで上映する権利(上映権)など、様々な権利が含まれています。これらの権利は、原則として著作権者の許可なく行使することはできません。日本では、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)などが著作権の管理を行っています。
著作隣接権とは?(レコード会社や実演家が持つ権利、特に「原盤権」)
著作隣接権は、著作物を世の中に広める役割を担う人々に与えられる権利です。具体的には、レコード製作者(レコード会社)、実演家(歌手や演奏家)、放送事業者、有線放送事業者などが持ちます。
この中で特に重要なのが、レコード製作者が持つ「原盤権」です。原盤権とは、CDや音楽配信サービスで提供されている「音源そのもの」(マスター音源、原盤)を複製したり、公衆に送信したり、上映したりする権利を指します。作詞・作曲家が持つ著作権とは異なり、音源を制作したレコード会社などがこの権利を持っています。
なぜiTunes/Amazon Musicの「原盤権」が問題になるのか
iTunesやAmazon Musicで販売されている楽曲データは、レコード会社が制作した「原盤」をデジタル化したものです。このデジタルデータを利用して葬儀のスライドショーを作成し、参列者の皆様に上映する行為は、原盤権者の許可なく「複製」や「公衆上映」を行うことに該当する可能性があります。
つまり、作詞・作曲家への著作権料をクリアしたとしても、音源を制作したレコード会社への原盤権の許諾がなければ、法的な問題が生じるリスクがあるのです。
ここで、著作権と著作隣接権(原盤権)の違いを比較表で見てみましょう。
| 権利の種類 | 権利者 | 対象 | 主な権利 | 葬儀での利用におけるポイント |
|---|---|---|---|---|
| 著作権 | 作詞家、作曲家 | 楽曲の「創作物」自体(メロディ、歌詞など) | 複製権、演奏権、上映権、公衆送信権など | 楽曲そのものの利用に関する許諾が必要 |
| 著作隣接権 (原盤権) |
レコード会社、実演家 | 「音源」そのもの(CD音源、配信データなど) | 複製権、公衆送信権、送信可能化権など | 特定の音源(iTunes/Amazon Musicのデータなど)の利用に関する許諾が必要 |
iTunesやAmazon Musicの利用規約と葬儀での扱い
購入・ダウンロードはあくまで「私的複製」
iTunesやAmazon Musicなどの音楽配信サービスで楽曲を購入・ダウンロードする行為は、著作権法で認められている「私的複製」の範囲内で行われるものです。これは、個人が家庭内で使用するために、自身でCDをコピーしたり、録音したりするのと同じ位置づけです。
しかし、この「私的複製」は、あくまで購入者本人が個人的に楽しむことを目的としており、その範囲を超えて第三者に利用させたり、公衆の場で流したりすることは、規約違反となるだけでなく、著作権法上の問題を引き起こす可能性があります。
規約違反となる具体的なケース
iTunesやAmazon Musicの利用規約では、以下のような行為が一般的に禁止されています。葬儀での利用がこれらのケースに該当する可能性がないか、確認が必要です。
- 購入した楽曲データを、個人的な使用目的以外で複製すること。
- 楽曲データを公衆に向けて送信(インターネット配信など)すること。
- 楽曲データを公衆の場で演奏、上映、放送すること。
- 楽曲データを営利目的で利用すること。
葬儀でのスライドショーBGMとしての利用は、営利目的ではないとしても、参列者が「公衆」と見なされる場合があり、上記の「公衆の場で上映すること」に該当する可能性が高いです。したがって、利用規約の範囲を超えた行為となり、法的なリスクを伴うことになります。
葬儀で合法的に市販曲を流すための方法
では、故人様が愛した市販の楽曲を、法的な問題をクリアして葬儀で流すにはどうすればよいのでしょうか。最も確実な方法として、ISUM(アイサム)の活用が挙げられます。
ISUM(一般社団法人 音楽特定利用促進機構)の活用
ISUM(一般社団法人 音楽特定利用促進機構)は、結婚披露宴や葬儀など、特定の目的で市販の楽曲を利用する際に発生する著作権と著作隣接権(原盤権)の処理を、一括して代行してくれる団体です。
通常、著作権と原盤権は別々の権利者が持っているため、それぞれに許諾を得る必要がありますが、ISUMを通じて申請・許諾を得ることで、これらの複雑な手続きをまとめて行うことができます。
ISUM申請で原盤権・著作権の両方をクリア
ISUMに申請し、許諾を得ることで、使用したい楽曲の著作権(JASRACなどの管理団体を通じて作詞家・作曲家へ)と、原盤権(レコード会社へ)の両方の利用許諾をクリアすることができます。これにより、iTunesやAmazon Musicで購入した楽曲データであっても、安心して葬儀のスライドショーBGMなどとして利用できるようになります。
ISUMの利用には、楽曲ごとに定められた利用料が必要となりますが、法的なリスクを回避し、安心して故人様をお見送りするためには非常に有効な手段です。
葬儀社がISUM加盟業者か確認する重要性
ISUMへの申請は、基本的に個人で行うことはできません。ISUMの利用は、ISUMに加盟している事業者(結婚式場、葬儀社など)を通じて行うことになります。
そのため、葬儀で市販曲を流したい場合は、まず担当の葬儀社がISUMに加盟しているかを確認することが重要です。もし加盟していれば、葬儀社が申請手続きを代行してくれるため、ご遺族の負担を大幅に軽減できます。打ち合わせの際に、BGM利用について相談し、ISUMの利用が可能か尋ねてみましょう。
著作権問題を回避できる代替案
ISUMの利用が難しい場合や、より手軽に音楽を利用したい場合は、以下の代替案も検討できます。
著作権フリー音源・パブリックドメイン楽曲の利用
著作権フリー音源とは、著作権者が利用規約の範囲内で自由に利用を許可している楽曲や、著作権が消滅している楽曲(パブリックドメイン楽曲)を指します。
- 著作権フリー音源:インターネット上には、商用利用や映像作品のBGMとしての利用が許可されているフリー音源サイトが多数存在します。利用規約をよく確認し、葬儀での使用が可能な楽曲を選べば、著作権の問題を心配せずに利用できます。
- パブリックドメイン楽曲:著作権の保護期間が満了した楽曲は、誰でも自由に利用できます。クラシック音楽の有名曲などがこれに該当します。ただし、演奏された「音源」自体には、演奏者やレコード会社の著作隣接権(原盤権)が発生している場合があるため、注意が必要です。原則として、自身で演奏した音源を使用するか、パブリックドメインの音源提供サービスを利用しましょう。
故人が生前に制作したオリジナル楽曲
もし故人様が生前に作詞・作曲されたオリジナル楽曲がある場合、その楽曲は故人様ご自身が著作権者となります。故人様が著作権を第三者に譲渡していない限り、ご遺族は故人様の意思を尊重し、自由にその楽曲を葬儀のBGMとして利用することができます。
故人様の想いが詰まったオリジナル楽曲は、何よりも心に響くBGMとなるでしょう。著作権の問題も発生しないため、安心して利用できる最良の選択肢の一つです。
まとめ:葬儀BGMの選曲は著作権に配慮を
故人様を偲び、送り出す葬儀の場で流すBGMは、参列者の心に深く刻まれる大切な要素です。iTunesやAmazon Musicで購入した楽曲を流したいと考えるお気持ちはよく理解できますが、個人的な利用とは異なる「公衆上映」にあたる可能性があるため、著作権と原盤権の処理が不可欠となります。
合法的に市販曲を利用するためには、葬儀社を通じてISUMへの申請を行うのが最も確実な方法です。また、著作権フリー音源やパブリックドメイン楽曲、故人様が生前に制作されたオリジナル楽曲なども、著作権問題を回避できる有効な代替案となります。
故人様との最期のお別れを、法的な心配なく、心穏やかに執り行えるよう、BGMの選曲と利用方法には十分な配慮をお願いいたします。葬儀社とよく相談し、故人様らしい、そして安心して流せる一曲を選んでください。
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